7. 多階層複合物理グループ

プラズマの運動には大きく隔たった複数の時間・空間スケールが含まれるた め、一つの物理モデルで現象を十分に、かつ効率良く記述する事は困難です。 このため、注目するスケール(例えばミクロスケール、マクロスケール)に ついて別々の物理モデルを用いてシミュレーションを行うのが常道です。 しかし、スケールごとに分離したシミュレーションでは、現象を統一的に理 解するのは困難です。そして、核融合の高温プラズマはまさにこのような困難な問題の典型です。
このグループでは、この階層の垣根を越えたプラズマの運動の統一的な理解 を目指して、いくつかのスケールを同時に着目し、多階層シミュレーション モデルの開発研究を行っています。

左図の説明:
磁気リコネクションの多階層シミュレーションの例です。左は磁力線、右は流体速度ベクトルを表しています。以前の結果から、多階層モデルは下記のように発展しています。まず、下流方向を周期境界条件から開放境界条件へと改良し、アウトフローが下流から出て行くことができるようになりました。また、マクロ階層部分に不等間隔格子を適用し、広い領域を計算することができるようになりました。
右図の説明:
これまでの多階層シミュレーションでは、リコネクション上流方向を階層間連結することに取り組んできました。今後大規模なリコネクション系をシミュレーションするためには、下流方向を階層間連結することが必要です。その第一段階として、連結手法を改良して、ミクロ階層からマクロ階層へ、Maxwell速度分布を満たしたプラズマが伝播する多階層シミュレーションを実施しました。図はプラズマ質量密度の鳥瞰図です。PIC領域からMHD領域へスムーズにプラズマが伝わっていることが分かります。
 



シミュレーションコードの紹介

名称:PASMO
  • 目的:エネルギーの流出入のある系での粒子シミュレーション
  • アルゴリズム:境界部を除いた本体は陽解法の標準的PIC法、上流境界は凍結条件を仮定しシフト型マックスウェル分布、下流境界はプラズマの入出力のできる自由境界
  • 特徴・応用例:ミクロ解放系における無衝突駆動リコネクション。長時間ランによる定常状態の議論や間欠性の議論が可能。連結階層シミュレーションモデルのミクロ階層を担当するモデル。
  • 参考論文:
    (1) H. Ohtani, and R. Horiuchi:“Open boundary condition for particle simulation in magnetic reconnection research”, Plasma and Fusion research, Vol. 4, (2009) 024-1-024-14.

名称:MARIS
  • 目的:マクロな物理とミクロな物理を同時に、自己無撞着に解く多階層シミュレーション
  • アルゴリズム:マクロ階層はMHDコード、ミクロ階層はPIC(上記PASMO)コードを用いて解く。
  • 特徴・応用例:シミュレーション領域をマクロ階層とミクロ階層に分け、それぞれの領域によってアルゴリズムを変える。2つの階層間には、データのやりとりをするインターフェイス領域が挿入されている。プラズマ現象への適用例として、無衝突磁気リコネクションが挙げられる。
  • 参考論文:
    (1) 宇佐見俊介、大谷寛明、堀内利得、田光江: 「磁気リコネクション研究をめざした多階層シミュレーションモデルの開発」 プラズマ・核融合学会誌 Vol.85, 585-588 (2009)
    (2) S. Usami, R. Horiuchi, H. Ohtani, and M. Den: "Development of Multi-Hierarchy Simulation Model with Non-Uniform Space Grids for Collisionless Driven Reconnection" Physics of Plasmas 20 061208 (2013)




最近の発表論文リスト

  1. S. Usami, H. Ohtani, R. Horiuchi, and M. Den: "Simulation of Plasma Flow Injection with Multi-Hierarchy Model Aiming Magnetic Reconnection Studies" Communications in Computational Physics 11 1006-1021 (2012)
  2. S. Usami, R. Horiuchi, H. Ohtani, and M. Den: "Development of Multi-Hierarchy Simulation Model with Non-Uniform Space Grids for Collisionless Driven Reconnection" Physics of Plasmas 20 061208(2013)
  3. H. Miura and K. Araki, "Coarse-graining study of homogeneous and isotropic Hall magnetohydrodynamics turbulence" Plasma Physics and Controlled Fusion 55 014012-1 (2013)