1. プラズマ流体平衡・安定性グループ

プラズマ流体近似に基づく理論及び数値シミュレーションを駆使して、磁場閉じ込め核融合プラズマの平衡、安定性、非線型発展等における性質を解明することを目指します。LHDプラズマで観測される現象の物理的機構を明らかにすることを中心とした解析を行います。プラズマの自己安定化現象、崩壊現象、誤差磁場等による磁気島の影響、ペレット溶発現象等の解析を通じて、安定放電領域限界や最適な粒子補給手法に関する系統的な知見を得るための研究を行います。同時に、モデル方程式の拡張やそれに基づくコード開発を進め、それまでの解析結果の修正や新たな知見の獲得を目指します。さらに、これらの知見を基に、トロイダルプラズマ全体にわたる普遍的な学理の構築を目指し、輸送モデルや他の理論研究との関連も検討します。




最近の研究成果

三次元平衡計算と電場計測との比較によるLHDプラズマの最外殻磁気面の同定
HINT2コードによるシミュレーションで得られた磁力線長が急激に短くなる位置と、LHD実験において計測された周辺電場シアが最大となる位置が良く一致し、この位置を最外殻磁気面の位置として同定することができた。
(Y. Suzuki et al 2013 Nucl. Fusion 53 073045.)

磁力線ポアンカレマップと径電場シア


磁力線長と径電場シアの比較

RFPプラズマのヘリカル構造への非線型遷移の再現
軸対称プラズマである逆磁場ピンチ装置(RFP)の実験において、プラズマが自発的にヘリカル構造に遷移することが観測されており、その状況を三次元MHDコードMIPSを用いた非線型MHDシミュレーションによって再現することに成功した。 (N.Mizuguchi et al., Plasma and Fusion Research 7 (2012) 2403117.)

初期平衡圧力分布


遷移後の圧力分布

 



シミュレーションコードの紹介

名称:CAP
  • 内容:
    CAPコードはトーラスプラズマ中における固体ペレットの溶発をCIP法により計算するコードである。このコードは固体相、液体相、気体相を含む多相問題に適用でき、かつMHDプラズマを扱うことができる。その主な特徴は以下の通りである。
    1. ペレット溶発は固体から気体、そしてプラズマへと相転移する現象である。CIP法は固体と気体といった非圧縮性流体、圧縮性流体を区別することなく統一的に解くことができる計算手法である。
    2. 固体とプラズマでは密度が7桁以上異なる。このような問題でも数値的に比較的安定に解くことができる。

    CAPコードを用いて以下の研究に取り組んでいる。
    1. ペレット溶発により生じたプラズモイドのドリフト運動がトカマクとLHDでは異なるという実験結果の解明。
    2. LHDにおいて密度制御するための最適なペレット入射条件の探求。

    今後は、多相問題とMHDプラズマを結合し、かつ実際のペレットサイズを用いた計算を行う予定である。
  • 参考文献:
    (1) R.Ishizaki, N.Nakajima, "Plasmoid motion in helical plasmas", Journal of Plasma and Fusion Research SERIES, Vol. 8 (2009) pp.0995-0998.
    (2) R.Ishizaki, N.Nakajima, M.Okamoto, P.B.Parks, "Motion of the ablation cloud in torus plasmas", Journal of Plasma Physics, Vol. 72 (2006) pp.1159-1162.
名称:MIPS
  • 目的:
    環状プラズマにおけるMHD現象の解析のための共通基盤コード
  • アルゴリズム:
    4次精度有限差分法+4次Runge-Kutta法、3次元領域分割によるMPI並列化
  • 特徴・応用例:
    様々なMHDおよび拡張MHDコード開発のための基盤コードとして整備。LHD におけるバルーニングモードのシミュレーション、RFPにおけるヘリカル構造の形成過程
  • 参考文献:
    (1) Y. Todo, N. Nakajima, M. Sato and H. Miura, "Simulation Study of Ballooning Modes in the Large Helical Device", Plasma and Fusion Research Vol. 5 (2010) S2062.
    (2) N. Mizuguchi, A. Sanpei, et al., "Modeling of Formation of Helical Structures in Reversed-Field Pinch", Plasma and Fusion Research Vol. 7 (2012) 2403117.
名称:HINT2
  • 目的、アルゴリズム:
    HINT2コードは、3次元MHD平衡を入れ子の磁気面を仮定することなく計算できるコードである。このコードはトカマク、ヘリカルを問わず、すべてのトーラス配位に適用でき、磁気島やストカスティックな磁力線構造を扱うことができる。その主な特徴は以下の通りである。
    1. 円柱座標形状で散逸MHD方程式の時間発展を計算することにより、初期値問題として3次元MHD平衡計算を行う。
    2. 圧力と磁場の時間発展を分離し、圧力と磁場の計算を交互に繰り返すことで平衡計算を行う。このため、比較的短時間で緩和した平衡解を求めることが可能である。
  • 特徴・応用例:
    HINT2コードを用いて以下の研究に取り組んでいる。
    1. 高ベータLHDプラズマにおける、有限ベータ効果による磁力線構造の乱れと平衡限界の関連性。
    2. 外部摂動磁場による磁気島に対する有限ベータ効果の影響。 今後は、トロイダル方向のプラズマ回転を導入し、より現実的な3次元MHD平衡解を計算できるよう改良する予定である。
  • 参考文献:
    (1) Y. Suzuki, et al., "Development and application of HINT2 to helical system plasmas", Nuclear Fusion Vol. 46 (2006) L19.
名称:NORM
  • 目的:
    ヘリオトロンプラズマのMHD線型安定性及び非線型ダイナミクス解析コード
  • アルゴリズム:
    簡約化MHD方程式の時間発展を追跡する。VMECコードを用いた三次元平衡解を修正ステラレータ近似に基づいて、トロイダル方向に平均化された平衡量を用いる。空間離散化として、動系方向には中心差分、ポロイダル及びトロイダル方向にはフーリエ変換を用いる。時間発展には、各方程式の散逸項にのみ陰解法を用い、全体には修正オイラー法を適用している。トロイダルモード数に対するMPI並列化を行っている。
  • 特徴・応用例:
    VMECコードと組み合わせたマルチスケール手法を開発し、非常にゆっくりとした時間スケールでの背景平衡の変化を伴う非線型MHDダイナミクスの時間発展が追跡できるようになっている。
  • 参考文献:
    (1) K. Ichiguchi, N. Nakajima, M. Wakatani, B. A. Carreras, V. E. Lynch, “Nonlinear MHD analysis of LHD plasmas”, Nuclear Fusion, 43, (2003) 1101-1109.
    (2) K. Ichiguchi, B. A. Carreras, “Multi-scale MHD analysis incorporating pressure transport equation for beta-increasing LHD plasma”, Nuclear Fusion, 51 (2011) 053021.
    (3) K. Ichiguchi, S. Sakakibara, S. Ohdachi, B. A. Carreras, “Numerical magnetohydrodynamic analysis of Large Helical Device plasmas with magnetic axis swing”, Plasma Physics and Controlled Fusion, 55, (2013) 014009.